出生時体重と赤ちゃんの発育

Doctor:
岩下光利

杏林大学医学部産科婦人科学教室

出生時体重が2500g 未満の赤ちゃんを低出生体重児と呼びます。この中には、早産(そうざん)で生まれたために低出生体重児となったり、妊娠37週以降の正期産(せいきさん)でも妊娠週数に見合った発育がない胎児発育不全児(たいじはついくふぜんじ)、胎児発育不全でなおかつ早産でとなった場合などがあります。

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低出生体重児

低出生体重で生まれた赤ちゃんは、将来、冠動脈疾患(かんどうみゃくしっかん)や高血圧症、脂質代謝異常、糖尿病などの、いわゆる生活習慣病を発症する頻度(ひんど)が高くなることが指摘されています。生活習慣病だけでなく、低出生体重児では免疫(めんえき)機能や内分泌(ないぶんぴつ)機能に異常が生じやすく、精神疾患とも関連しているといわれています。赤ちゃんがおなかの中で十分な栄養をとれないと、それに合わせて赤ちゃんのからだの機能が変化し(エピジェネティック変化)、生まれてからの環境にうまく順応できずに生活習慣病を発症すると考えられています。

巨大児

出生時体重が4000gをこえる巨大児では、糖尿病を発症するリスクが増え、動物実験では高脂肪栄養が赤ちゃんの生活習慣病のリスクとなることも報告されています。出生時体重が少なすぎても多すぎても赤ちゃんのその後の発育に問題が生じるわけですので、妊娠中は赤ちゃんのために無理なダイエットをするのは控え、食事の偏(かたよ)りがないように注意が必要です。

胎児発育不全児

胎児(たいじ)発育不全児には、赤ちゃんに原因があるものと母親に原因があるものに分けられます。先天奇形(せんてんきけい)や染色体異常、子宮内感染などが、赤ちゃんに原因があるものです。母親の栄養障害や妊娠高血圧症候群に見られる胎盤(たいばん)の機能異常、合併症(がっぺいしょう)などは、母親を原因とするものです。胎児発育不全児は出生体重が小さいほど、また発育不全の程度が大きいほど、予後(よご)が悪いのですが、周産期医療の発達で生存できる赤ちゃんも増えてきています。しかし、これらの赤ちゃんも成人になると生活習慣病にかかりやすくなることが報告されています。また、早産では赤ちゃんの未熟性がその後の発育に影響しますので、早産に胎児発育不全がともなっていると、なおさら赤ちゃんの発育には悪い影響があることは言うまでもありません。