DV(ドメスティック バイオレンス)

Doctor:
加藤治子

阪南中央病院産婦人科

DV(ドメスティック バイオレンス)のドメスティックとは「家庭」を意味します。DV とは、配偶者や恋人によって行使される暴力を指す言葉です。

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殴る蹴るなどの暴力だけをDVと思っていませんか?

直接的な暴力だけがDVではありません。たとえば… 実家に帰ったり、友達に会ったりすると機嫌が悪くなる。あなたの携帯をチェックして、アドレスを消させる。LINE等のメッセージにすぐに返信しなければ怒る。お金をすべて管理する。いやなのに性交を求める、拒否すると怒る、避妊(ひにん)をしてくれない…(結婚していても、同意のない性交は性暴力です)。こういった相手の態度を、「愛されているから仕方がない」、「彼の気持ちに応えられない私が悪い」と思っていませんか?「結婚したら落ち着いてくれるだろう」と思って結婚したのに、もっと束縛(そくばく)が強くなり、「妊娠したら変わってくれるだろう」と期待して妊娠したのに、一層暴力が激しくなる。「もう無理」と相手に別れを切りだすと、泣いて謝って人が変わったように優しくなるので、もう一度やり直そうと思うとまた同じことの繰り返し…。これが若い世代によくみられる DV被害のサイクルです。

このようにDVは、身体的・精神的・社会的・経済的・性的暴力をともなうものであり、女性の人間としての尊厳(そんげん)を深く傷つける行為(=人権侵害)であり、同時に女性の心とからだの健康を著(いちじる)しく損なうものです。妊娠中にDVがエスカレートすることがありますが、妊婦さんは不安・不眠になったり、食欲が落ちたりしますので、胎児(たいじ)への影響も心配です。

まずは相談しましょう、病院やクリニックでも相談できます

子どものいる家庭では、DVは子どもへの虐待でもあります。子どもに対して直接的な暴力がなくても、父親が母親に暴力をふるっているのを子どもがみることは、精神的虐待(ぎゃくたい)です。父親の罵声(ばせい)が飛び、母親の悲鳴が響きわたる家庭は、子どもにとって安心安全な居場所ではありません。「配偶者(はいぐうしゃ)からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」にもとづき、全国の市区町村や女性センターに、DV被害者のための相談窓口が設置されています。気軽に相談してみましょう。緊急時には警察に飛び込むことも躊躇(ちゅうちょ)しないでください。妊婦健診を受けている病院やクリニックの医師や看護師にも相談できます。自分のためにも子どものためにも、DV に負けない、許さない人生を選択しましょう!