男性の不妊症

Doctor:
永井 敦

川崎医科大学泌尿器科学教室

不妊症の原因はさまざまですが、夫側に原因があるケースは48%とされています。男性不妊症の原因は、①精子を製造する能力に問題がある場合(造精機能(ぞうせいきのう)障害)、②生みだされた精子が、ペニスの先まで運ばれない場合(精路通過(せいろつうか)障害)、③セックスががうまくできない場合(性機能障害)などがありますが、①が約80%ともっとも多いのです。なぜ健康な精子が十分につくられないのか、約6 割が原因不明です。治療は、ホルモン薬、循環改善薬、ビタミンB12・E などの投与や、コエンザイムQ10、亜鉛などのサプリメント投与を行います。通常、補助生殖医療(ほじょせいしょくいりょう)(生殖補助医療〜進歩した不妊治療参照)も同時に行います。

精索静脈瘤のせいで精子がつくれない場合

造精機能障害のうち原因がはっきりしているものに精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)があります。精巣の周囲に血液がうっ滞することで精巣温度が上昇。精巣の低酸素状態の持続や有害物質による影響も精子形成異常や精子運動率低下に関係しています。手術によって妊娠率が上昇するという報告が多数みられます。顕微(けんび)授精(じゅせい)を施行する症例でも、夫の精索静脈瘤手術を行なうと妊娠率が45%から60% に上昇したという報告があります。

精液に精子がある場合・ない場合

射出した精液に精子がある場合は、不妊治療時に男性の身体的負担はありません。しかし、無精子症の場合は、陰嚢(いんのう)を0.5cm~1.0cmほど切開して精子を取る手術(TESE)を行い、顕微授精が行われます。精管の通過障害などによる閉塞性(へいそくせい)無精子症の場合は、精路再建術(せいろさいけんじゅつ)が行われることもありますが、最近ではこの方法を行うことが多くなっています。施設によっては約40%の患者さんで精子が回収でき、受精率も向上してきています。無精子症をきたす有名な染色体異常でクラインフェルター症候群がありますが、この疾患(しっかん)においても精子回収率は30~40%で、妊娠例も多く報告されるようになりました。

For Men

男性に原因があることから目を逸らさないで

一般に、不妊の原因が男性にあることを受けとめるのは、女性不妊以上につらいものだとされています。治療に気の進まない気持ちもわかりますが、目を逸らしている間にパートナーの女性の年齢も上がり、妊娠率がより下がってしまいます。不妊治療を女性任せにせず、ふたりで診療を受けること、常にパートナーと話し合うことが大切です。