生理、つらくない?

Doctor:
板岡奈央

三井記念病院産婦人科

月経とは、女性特有の生理現象で、約1 カ月の間隔(かんかく)でおこり、3 ~ 7 日続く子宮内膜(しきゅうないまく)からの周期的な出血のことをいいます。11 ~ 13 歳の頃に始まり、閉経(へいけい)まで30 ~ 40 年間ほど続きます。医学用語では「月経」といいますが、一般的には「生理」などとも呼ばれます。

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月経はなぜおこるの?

子宮の内側は子宮内膜と呼ばれる組織で覆われています。子宮の左右には卵巣(らんそう)があり、その中で卵胞(らんぽう)といわれる卵子の入った袋が発育し、毎月ひとつの卵子が卵巣の外へ排出されます。これを「排卵(はいらん)」といいます。排出された卵子は、卵管という子宮への通り道を通って、子宮内膜の上まで転がっていきます。この排卵の時期に、セックスをすると、精子が腟(ちつ)から子宮口を通って子宮の中に侵入し、卵管の辺りで卵子と出会い受精卵(じゅせいらん)となって子宮内膜のほうへ転がっていきます。これが妊娠の始まり(着床(ちゃくしょう))です。

妊娠についてはここではくわしく説明しませんが、子宮内膜は受精卵を着床しやすくするために、少しずつ厚くなりフワフワのベッドのような状態になります。子宮内膜は実際に受精をするしないに関わらず、毎月このように厚くなるしくみになっています。厚くなった子宮内膜は、卵子が受精しなかった場合には、排卵後約2 週間ではがれ落ち、子宮口から出血として排出されます。この出血が月経です。簡単にいうと、月経とは、このような「卵胞の発育→排卵→厚くなった子宮内膜の排出」という、女性ホルモンによる卵巣と子宮の働きによる出血のことです。はがれて薄くなった内膜は、次の排卵に向けてまた厚くなり、受精しなかったらまたはがれ落ちるというサイクルを、毎月繰り返しているのです。

月経痛で困ったら?

月経にともなう痛みは、人によって軽い人、強い人さまざまです。また同じ人でも、痛い月と痛くない月があったり、月経が始まったばかりの頃は痛みが強かったけれど、大人になるにつれて痛みが軽くなってくるケースや、逆に始めは痛くなかったけれど、年月が経つにつれて痛みが強くなるケースなどもあります。月経痛の原因として、ストレスや月経に対する不安・緊張などの精神的な要因、子宮内膜でつくられるホルモンの影響、子宮内膜症や子宮筋腫(きんしゅ)などの子宮・卵巣の病気によるものなどがあります。精神的な要因が強い場合は、ストレスを避けること、リラックスできるような気分転換の時間を持つことや、月経のしくみを知り、月経に対する恐怖心を軽くするなどの工夫で、症状が軽くなることがあります。また子宮内膜(しきゅうないまく)はプロスタグランジンという子宮の収縮を促(うなが)すホルモンを産生しますが、これが月経痛の原因になることがあります。これに対しては痛みどめ、ピルなどのホルモン剤、漢方薬などを使用することで、症状がやわらぐことがあります。痛みどめは、痛みがつらくなる前に服用した方が、プロスタグランジンの分泌(ぶんぴつ)を早めに抑えることができ、鎮痛(ちんつう)(痛みどめ)効果が大きくなります。そのため、痛みがつらくなる前に服用することをおすすめします。子宮内膜症や子宮筋腫(きんしゅ)などが月経痛をひきおこしている場合は、前述の治療に加えて手術が必要になる場合もあります。日常生活に支障をきたすような月経痛がある場合には、ひとりで我慢せず、遠慮なく産婦人科医に相談してください。

月経不順のときはどうしたらいいの?

正常な月経は25 ~ 38 日の周期(月経が始まった日から次の月経が来る前日までを指します)で、出血する期間は3 ~ 7 日間といわれています。月経不順の種類には、周期の異常と出血期間の異常があります。女性ホルモンのバランスが乱れておこることが多いですが、子宮内膜症、子宮筋腫や子宮がんなどの病気が原因のこともあります。続くようであれば放っておかずに産婦人科医に相談しましょう。その際に基礎体温表(月経周期の正しい数え方・基礎体温のつけ方参照)を記録して持参すると、女性ホルモンのバランスや排卵(はいらん)の有無を知る参考になります。思春期では、月経不順はよくあることですので、心配し過ぎる必要はありません。

For Men

月経前のほうがツラい女性も多いんです

女性は月経の3 ~ 10 日前に、精神的または身体的に独特の症状がでることが多く、これを月経前症候群(しょうこうぐん)(PMS)といいます。半数以上の女性が、月経前には多種多様な症状を感じています。身体的症状で多いものは腹痛、胸の張り、腰痛、頭痛、むくみなど。精神的症状で多いのは、いら立ち、怒り、眠気、不安、落ち込み、集中力の低下などがあります。程度には個人差があり、あまり気にならない人もいれば、痛みが強くて家からでられなかったり、感情のコントロールが効かなくなるなど、重症な人もいます。「月経前だから…」と、女性が月経について話をする機会はなかなかないのではないでしょうか。そのため、学校の先生や職場の同僚・上司、恋人にも理解されずに、「さぼっている」「集中できていない」「ヒステリックな人」と誤解されてしまうことも少なくありません。月経前症候群はなくても、男性に月経であることを悟(さと)られたくないという羞恥心(しゅうちしん)を持つ女性もいます。月経は女性が妊娠するためのしくみの一環であり、毎月おこる自然現象で恥ずかしいことではありません。月経は女性特有の現象で男性には理解しがたいものです。しかし、月経に関わるトラブルや誤解を避けるためには、女性側には、月経について男性にきちんと説明する勇気が必要です。男性側には、立場や関係性に応じた、女性の月経についての理解と思いやりを持った対応が大切なのです。