性同一性障害

Doctor:
中塚幹也

岡山大学大学院保健学研究科岡山大学ジェンダークリニック

性同一性障害(Gender Identity Disorder: GID、トランスセクシャル、トランスジェンダー)では心の性(せい)とからだの性とが異なり、性別違和感(いわかん)のため、自分のからだの性を強く嫌う心理状態が続きます。心の性は男性、からだの性は女性のfemale to male(FTM)と、心の性は女性、からだの性は男性のmale to female(MTF)とに分かれます。子どもの頃から、自殺念慮(ねんりょ)(58.0%)、自傷(じしょう)・自殺未遂(みすい)(30.0%)、不登校(29.5%)などを高い確率で経験しています。特に中学生では、第二次性(せいちょう)徴によるからだの変化への焦燥感(しょうそうかん)に、制服や恋愛の問題が加わり、自殺念慮は高率になるため、文科省は学校での対応を進めています。性同一性障害は、からだへの医学的治療が行われる点で、同性愛とは異なります。思春期のからだの変化を一時的にとめておく治療を行い、この間に慎重に診断することもできるようになりました。もし、性別のことで悩んでいる場合は、保護者や保健室の先生など、理解してくれる人に相談しましょう。もし周囲に見つけられなければ、性同一性障害の当事者グループや家族会、ジェンダークリニックやGID(性同一性障害)学会などに相談してみてください。世界的には「性別違和」とも呼ばれつつあります。あえて「障害」と呼ばなくても、治療を健康保険で行うことができるなどの体制が整ったときには、日本でも「障害」という文字が削除されることが望まれます。

性別は誰が決める?

性的指向(しこう)(好きになる性)や性自認(せいじにん)(心の性)は生まれながらに決まっているものです。変えようとしても変えられません。無理やりに変えようとされることは自身の本質を否定されることになります。そのため、うつになってしまったり、自殺しようとしたりする場合もあります。また、ほかの人々からの嫌悪(けんお)や差別を受けると自分自身もLGBTI(同性愛、多様な性のあり方参照)などに対して嫌悪感を持ち(嫌悪感の内在化(ないざいか))、素直に生きることが困難になります。LGBTI の人々などを理解し支援する人々はアライ(ally)とも呼ばれます。もし、周囲に困っている人がいれば、話を聞いてみることから、あなたも始めてみてはいかがでしょう。

【多様な性のあり方】

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性同一性障害の診断では性自認(心の性)に着目し性的指向は問いませんが、典型例では( )内の性のほうへ向かうので、外見的には同性愛(ホモセクシャル)のように映る場合もあります。同性愛では性自認と生物学的性(からだの性)とは一致していますが、性的指向がからだの性に向かいます。また、上記以外にも性のあり方は多様な形をとり得ます。