妊婦さんの体重管理の新常識

Doctor:
澤倫太郎

日本医科大学女性診療科・産科

かつては「おなかの子のぶんも食べなきゃダメ」とご家族にいわれたり、先輩お母さんからは「子どもを産んでから体重が何キロも増えた」と脅かされたり、妊婦さんの体重管理はなかなか大変です。

何kg増えていいの?

日本産科婦人科学会のガイドラインでは妊娠中の体重管理は「妊娠前の体格に応じて指導する」とされています。具体的には、妊婦さんの妊娠前の体重を用いてBMI(Body Mass Index)を用います。BMIとは肥満度を表すもので、BMI=体重(kg)÷身長²(m)で算出されます(やせすぎ、肥満の女性への影響参照)。たとえば身長160cm(1.6m)、体重が50kgの場合 BMI=50÷(1.62)²=19.5と計算されます。妊婦の体重管理は、「妊娠高血圧症の予防」「産科的異常の減少」といった目的によって、目安が異なります。下の表に一例として「適正な出生体重」のための目安を示します。

【適正な出生体重のための目安】

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厚生労働省が策定した日本人の食事摂取基準(2010年版)では「非妊娠時のBMI値が18.5~25.0未満の体格の妊婦が、妊娠40週の時点で約3kgの単胎児(たんたいじ)を出産するのに必要な体重増加量は11kg」としていますが、もちろん個人差もあります。またBMI≧25の体格の女性では、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、死産、巨大児および生まれてくる子どもの神経管閉鎖障害などのリスクが高まることが知られています。一方で最近の調査では、BMI<18.5 のやせ女性は、切迫早産(せっぱくそうざん)や早産、低出生体重児が生まれるリスクが高まることがわかってきました(出生時体重と赤ちゃんの発育参照)。

いずれにせよ大切なのは、食べ過ぎず、無理なダイエットもせず、バランスのとれた栄養素をとることです。かかりつけの産科の先生や助産師さんとよく相談してみてください。