妊娠したらたばこはやめましょう

Doctor:
海野信也

北里大学病院

妊娠中の喫煙(きつえん)は、母体の健康、妊娠経過、胎児(たいじ)の発育、さらには出生後の赤ちゃんに悪影響をおよぼすことが証明されています。妊婦さん本人の喫煙によるものだけではありません。同居する家族の喫煙の場合(受動喫煙(じゅどうきつえん))でも、程度の差はありますが、同じです。

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妊婦さんにも赤ちゃんにもたばこは有害

妊娠中に喫煙を続けると、流産(りゅうざん)(ヘビースモーカーでは吸わない人の2倍)、早産(そうざん)、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)、前置胎盤(ぜんちたいばん)(2~3倍)などの合併症(がっぺいしょう)の頻度(ひんど)が増加することがわかっています。赤ちゃんに対しては、口唇裂(こうしんれつ)、口蓋裂(こうがいれつ)、先天性の心疾患(しんしっかん)、手足の欠損(けっそん)、腹壁破裂(ふくへきはれつ)などの奇形(きけい)の頻度(ひんど)が高くなります。また、出生後、乳児突然死症候群、呼吸器感染症、中耳炎(ちゅうじえん)、ぜんそく、肥満、高血圧、糖尿病になることが多くなります。

妊娠中の母体の喫煙本数が増えれば増えるほど、赤ちゃんの発育に悪影響がでます。1日5~20本では250gぐらい、20本以上では350gぐらい出生体重が少なくなります。大人に大きい人、小さい人がいるように、赤ちゃんにも大きくなる素質を持っている子もいますし、小さめなのがその子にとっては普通、ということもあります。それぞれの赤ちゃんが、その本来の大きさに育ってくれればいいわけです。しかし、赤ちゃんの出生体重は子宮の中の環境がいいか悪いかによって大きな影響を受けます。環境がよければそのお子さん本来の大きさに育つことができますが、母体の病気、胎盤機能の低下、臍帯(さいたい)の異常などのために子宮内の環境が悪くなれば、赤ちゃんの発育にも悪影響がでます。喫煙は赤ちゃんが順調に発育するための環境を悪化させてしまう、重大な原因のひとつなのです。妊娠したら、たばこはやめましょう。赤ちゃんが順調に発育できる環境をつくるためにそれが一番いい解決法です。どうしても難しい場合は、少しでも本数を減らしましょう。

For Men

夫の禁煙・分煙も必要です

受動喫煙でも、肺がんと心血管疾患(しんけっかんしっかん)が増えることがわかっています。夫の喫煙によって、妻や家族の健康が損なわれることがあるわけです。また、妻が妊娠している場合は、赤ちゃんの出生体重が35~90gぐらい少なくなります。妊婦さんの子宮内の環境は、同居する家族の喫煙によって確実に悪化するのです。