女性の味方 ピル(経口避妊薬)

Doctor:
若槻明彦

愛知医科大学産婦人科学講座

低用量ピルは避妊(ひにん)のための薬剤で、正しく内服(ないふく)すると99%以上の避妊効果があり、コンドームなどほかの避妊法よりも確実なことがわかっています。低用量ピルは保険適用外ですが、避妊効果以外にも月経痛の改善を目的として保険適用された薬剤が最近使用できるようになっています。

避妊だけじゃない。ピルのいいところ!

避妊や月経痛改善以外のメリットとして、月経量減少や月経前症候群(しょうこうぐん)の症状改善、ニキビや多毛症(たもうしょう)の改善、骨密度(こつみつど)上昇などや卵巣(らんそう)がん、結腸(けっちょう)がん、子宮内膜(しきゅうないまく)がんの発症(はっしょう)を抑制(よくせい)することもわかっています。また、月経の時期を1 日単位で自分でコントロールできるのも、ピルの大きなメリットです。受験や部活の大会などのとき、月経前や月経中の不調で自分の実力を発揮できない人は、月経日を動かせるピルは大きな味方になってくれます。「将来、妊娠できなくなるんじゃないか…?」と心配する人もいますが、むしろ子宮(しきゅう)を休めることで、ピルをやめた後の妊娠率が上がるというデータもでています。

リスク、副作用は怖くない?

一方で、低用量ピルの一般的な副作用(ふくさよう)として吐(はき)気(け)、頭痛、不正出血などがありますが、これらのマイナートラブルは大半の場合、最初だけで、飲み続けたら消えるものです。重篤(じゅうとく)な副作用のひとつに静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)があります。低用量ピル服用女性の静脈血栓塞栓症の頻度(ひんど)は、わずかですが増加するといわれています。静脈血栓塞栓症の症状としては、激しい頭痛、急に目が見えにくくなったとかしゃべりにくくなった、激しい腹痛、下肢(しし)のむくみや痛みなどがあります。低用量ピルを服用中に症状がでた場合は、必ず処方医(しょほうい)に相談してください。早期に診断して治療すると、重症化しないこともわかっています。静脈血栓塞栓症は低用量ピルの内服を開始してから3 カ月以内がもっとも多いことや、肥満(ひまん)、喫煙(きつえん)、高齢女性の場合にそのリスクが上昇することもわかっており、注意が必要です。また、高血圧や喫煙は心筋梗塞(しんきんこうそく)のリスクを、偏頭痛(へんずつう)や高血圧は脳卒中(のうそっちゅう)のリスクを上昇させることがわかっているので、内服前の禁煙指導や血圧の管理が必要です。

このように低用量ピルにはデメリットもありますが、メリットのほうが多いことから世界的にも広く使用されていますし、低用量ピルを内服している女性はしていない女性と比較して全体の死亡率が低いということもわかっています。ピルは処方箋(しょほうせん)がないと買えないので、まず産婦人科医に相談してみましょう。