ハイリスク出産(前回帝王切開、子宮筋腫)

Doctor:
平松祐司

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 産科・婦人科学教室

前回が帝王切開だった場合のリスク

帝王切開(ていおうせっかい)すると子宮に傷ができるため、次の妊娠時に子宮破裂する危険性が増します。特に、妊娠中期の帝王切開で子宮体部(上のほう)を切開している場合に、その危険性が増します。以前に帝王切開している場合は、今回も帝王切開をすすめる病院が多いですが、施設によっては経腟分娩(けいちつぶんべん)もしています。その場合には、前回の帝王切開が子宮下部横切開である、頭位である、子宮頸管(しきゅうけいかん)が柔らかくなり児頭がよく下がっている、児頭が大きすぎないなどの条件が必要となります。残念ながら望めば誰でもできるわけではありません。

子宮筋腫がある場合

子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)(以下、筋腫)は女性の3 人に1 人に存在するありふれた疾患(しっかん)であり、また近年の晩婚化(ばんこんか)傾向もあり、妊娠して初めて産婦人科を受診してみつかることが多いです。 妊娠に筋腫が合併(がっぺい)する頻度(ひんど)は0.45~3.1%と考えられており、約20%の症例で妊娠中に筋腫が大きくなります。筋腫のある状態での妊娠では、妊娠、分娩、産褥期(さんじょくき)を通じて症状がでるリスクがあります。多いものとしては切迫流産(せっぱくりゅうざん)・早産(そうざん)、前期破水(はすい)、早産、痛み、胎盤(たいばん)の位置異常、妊娠高血圧症候群などがあり、5cm 以上の筋腫で症状がでやすくなります。妊娠末期に筋腫の大きさ・位置・個数、赤ちゃんの大きさ、向き、胎盤の位置などを総合評価し、経腟分娩するか帝王切開するかを決定します。筋腫合併例の帝王切開では赤ちゃんの向きの異常、胎盤位置異常、筋層が伸びにくいなどの状況があり、難しい帝王切開となります。また、産後には子宮収縮不良で出血量が増す可能性があります。帝王切開時に筋腫をいっしょに核出(かくしゅつ)するかどうかは施設により方針が異なりますので確認しましょう。妊娠前に筋腫を核出している場合は、子宮に傷が入っているため、前回帝王切開の妊婦さんと同じ扱いになります。

【子宮筋腫合併妊娠(妊娠8週)】

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