「HUMAN+女と男のディクショナリー」発刊にあたって

思春期から老年期まで、一生を通じて女性の健康管理にもっとも深く関わっているのが産婦人科医であり、私たちは常に女性の幸福、そして生まれ来る胎児、新生児の健やかな成長・発育を念願しています。

社会的には昨今、働く女性が増え、晩婚化、晩産化の傾向がみられます。また、わが国の女性の平均寿命は世界最高であり、閉経後の人生も長いといった特徴があります。これにともない、健康に支障をきたしたり、多くの疾患に遭遇したりする機会も増してきているように思います。

医学的にみると、思春期から老年期に到るまで、各年代で知っておいてほしい多くの産婦人科の知識、疾患があります。しかし、それらの知識がなかったために、長い間悩み苦しんだり、病気が進行してから産婦人科を受診される患者さんによく遭遇します。また、最近はインターネットなどを通じて容易に各種情報を入手できますが、誤った情報も少なくないといった状況があります。

このような背景をふまえ、日本産科婦人科学会では、各年代の女性に知っておいてほしい正しい情報を責任を持って伝える責務があると考え、新しい健康手帳「Human+(ヒューマンプラス)」を発刊することとしました。本手帳では、女性の健康に関する項目に重心をおいていますが、パートナーや同僚の男性にも知っておいてもらいたい内容はコラムとして加えました。また、男性自身に関する項目もかなりの数を準備しました。このため最終的には、健康手帳「Human+」は、女性だけでなく男性にも知っておいてほしいことを掲載した、健康について不安を感じたらまず紐解いていただきたいディクショナリーになっています。

「Human+」は、思春期、青年期、将来の妊娠のために、妊娠出産、中高年期にわけて構成しています。まず、今の自分が当てはまる時期の項目をお読みいただき、若い方には次いで今後自分が経験する年代の項目をお読みいただきたいと思います。そして、後で知らなかったと後悔しないような人生設計をたてるのに役立ててほしいと思っています。

この手帳を手にされた女性は、まず母子手帳を見たり、親に聞いて最後の記載欄をうめてください。そしてこれを、自分の健康管理手帳として、医療機関受診時には常に持参するようにしてほしいと思います。また、お読みいただいた項目で気になることがあれば、気兼ねなく早めに近くの産婦人科医を受診されることをおすすめします。そして若いときから、「かかりつけ医」、「My 産婦人科医」をつくっていただき、ことあるごとに相談し、健康で豊かな一生を過ごしてほしいと祈念しています。

最後に、刊行に当たりお忙しい中、執筆いただいた多くの産婦人科の先生、また関連項目を執筆いただいた泌尿器科の先生および関係諸氏に深く感謝いたします。また、本手帳は日本産科婦人科学会とハーゼスト株式会社、株式会社リクルートライフスタイルとの協力のもと完成したものであり、関係諸氏の絶大なる協力に感謝いたします。

日本産科婦人科学会では、本手帳を手にされた方からのアンケートをもとに、改訂を重ねていく予定であり、この手帳が国民に広く浸透し、国民手帳に育っていくことを祈念しています。また、本手帳の内容は日本産科婦人科学会のホームページでも公開しますので、多くの仲間に知らせていただき、ご活用ください。

2014年9月 公益社団法人 日本産科婦人科学会
理事長 小西郁生
未来ビジョン委員会委員長 平松祐司