若い女性のがん②子宮頸がん

Doctor:
三上幹男

東海大学医学部専門診療学系産婦人科

子宮の体部は胎児(たいじ)の宿る部分であり、頸部(けいぶ)は赤ちゃんがきちんと育つまで生まれないように、子宮に鍵をかけている部分です。この頸部に発生するがんが、子宮頸(しきゅうけい)がんです。発生したがんは、最初は表皮内に留まっており、摘出(てきしゅつ)すればほぼ治る初期のがんです。しかし、がんは、じょじょに表皮から深く入り込んでいき、がんが大きくなると、周囲の組織や膀胱(ぼうこう)、直腸などへと入り込み、ついには肺などの遠いところの臓器へ転移していきます。がんが深く入りこんでいくほど重症となり、治療が難しくなります。

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原因となるヒトパピローマウイルス

子宮頸がんの発生原因として、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染(かんせん)が明らかにされました。特にがんの原因と考えられるハイリスクHPVは、多くは性交渉によって感染します。近年、性交開始年齢の若年化にともない、子宮頸がんが若い女性に急増しています。その他、喫煙もがんの発生を高める要因と考えられており、頸がんの予防からも禁煙がすすめられます。HPV 感染については恐れることはなく、その多くは免疫系(めんえきけい)によって排除(はいじょ)されてしまうことから、HPV 感染をおこしてもごくわずかな人ががんになるのみで、大部分の人には何ごともおきません。たとえば風邪ウイルス感染者がすべて重篤(じゅうとく)な肺炎を引きおこすのではなく、多くは風邪の状態で留まって自然治癒(ちゆ)していくのと同じと考えられます。

検診に行こう

初期の子宮頸がんはほとんど自覚症状がありません。よって定期的ながん検診を受けること、および月経以外に出血などが見られたら、すぐに受診してできるだけ早期に発見することが大切です。また昨今はハイリスクHPVの感染予防のためのワクチンもあり、その接種を検討するのもいいでしょう(子宮頸がん予防ワクチン、受けたほうがいいの?参照)。