男性の排尿障害~老化現象とあきらめないで

Doctor:
那須保友

岡山大学病院 岡山大学病院新医療研究開発センター

排尿(はいにょう)にまつわるトラブル(排尿障害)は男女に関わらず、生活の質(QOL)を損なうやっかいなものです。外出がおっくうになる、人前にでたくない、気分がめいるといった状況に陥(おちい)ることもめずらしくありません。女性には尿がもれる(尿失禁)、回数が多い(頻尿(ひんにょう))、我慢できない(尿意切迫(にょういせっぱく))といった症状が一般的に認められます。男性には女性と類似した症状のほかに、尿の勢いが悪い、すぐにでない、でても時間がかかるといった症状が出現してきます。

60代以上男性の8割が悩んでいる

個人差がありますが、60歳以上の男性の78%がなんらかの症状を自覚しているといわれています。「過活動膀胱(ぼうこう)」と「前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)(前立腺が年齢と共に大きくなること)」が排尿障害を引きおこす主な病気ですが、神経系の病気などが原因のこともあります。過活動膀胱は男女共通ですが、前立腺肥大症は男性特有のものです。したがって、男性の場合は両者が合併した状態もあり、いろいろな症状がでます。急におこる抑えられない強い尿意で、我慢することが困難な状態を尿意切迫感といいます。この症状がおこる状態をひとまとめにして過活動膀胱と呼びます。頻尿と夜間頻尿をともないます。原因となる疾患(しっかん)はいろいろありますが、男性では前立腺肥大症もそのひとつです。原因不明のことも少なくありません。多くは薬物での治療となりますが、似たような症状を示す疾患も潜んでいるため、専門医に診てもらうことも必要です。

前立腺肥大症になると、尿がでにくい、尿が溜まらないといった症状が同時におこります。重症になると尿が詰まってでなくなる(尿閉(にょうへい))、さらには腎不全(じんふぜん)に陥(おちい)ることもあります。問診(もんしん)といくつかの簡単な検査を行い、まずは薬物治療となりますが、手術を行うこともあります。薬物治療の効き目が思わしくない場合は、専門医の受診をすすめます。前立腺がんが合併することもありますので、腫瘍(しゅよう)マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の検査は行っておきましょう。排尿障害に対する原因の究明と治療法の開発に関する研究は進歩しており、治療法も多彩になっています。多くの人が、不快な症状から解放されています。歳のせいだとあきらめず、医療機関を訪問しましょう。まずはかかりつけの医療機関へ、必要があれば専門である泌尿器科(ひにょうきか)での診察を受けましょう。男女ともに健やかなシニアライフを過ごしてもらいたいと願っております。