思春期に受ける主なワクチン

Doctor:
吉川裕之

筑波大学産科婦人科学

DT ワクチン(11~12歳・定期接種)

1期としてDPT 三種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳(ひゃくにちぜき)・破傷風(はしょうふう))を初回接種3回、追加接種を1回行います。また、2期として11~12歳(小学6 年生)時にDT二種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風)の接種を1回行います。DPT 三種混合の1期によって得られた免疫(めんえき)はじょじょに低下していくため、小学6年生で追加接種をする必要があるのです。

日本脳炎ワクチン(9~12歳で追加接種・定期接種)

日本脳炎(にほんのうえん)ワクチンの標準的な接種スケジュールは、1期として3歳で2回接種(接種間隔は1~4週間)、4歳で追加接種(2回目の約1年後)となっています。2期として9歳から12歳の間に1回接種します。合計2 期の定期接種です(北海道を除く)。現時点では、新型ワクチンを接種できるのは、定期接種の1期の子どもです。1期で従来型のワクチンを接種した子どもが2回目以降に新型ワクチンを接種できますが、1期初回の子どもが優先されます。2期の子どもは、従来型のワクチンを接種します。今後、安全性が確認された時点で、2期以降の子どもも新型ワクチンが接種できるようになる見込みです。

麻疹・風疹を防ぐMR ワクチン

MR ワクチンは麻疹(ましん)・風疹(ふうしん)の生ワクチンです。1期(1歳から2歳の誕生日前日まで)、2期(小学校入学前1年間)として、生涯2回の接種が行われています。かつて2回目のMR ワクチンの制度ができていなかったため、2007年、10~20歳代に麻疹の流行がおこりました。これをきっかけとして、5年間限定で中1と高3にMRワクチンの接種を行った結果、風疹患者数は着実に減少しました。しかし、2012年から2013年にかけて、20代から40代の成人男性を中心に患者数が増加し、風疹が流行しました。2010年に87人であった保健所への届け出は2013年には1万4357人に増加しました。妊娠初期の女性が風疹にかかることで赤ちゃんに障害が発生する先天性風疹症候群(ふうしんしょうこうぐん)(CRS) というものがあります。低出生体重や、白内障(はくないしょう)・緑内障(りょくないしょう)といった眼の異常、難聴(なんちょう)、心疾患(しんしっかん)(心臓の病気)などを持って生まれてくるものです。1999 年以来、年間0~2例でしたが、2012年4例、2013年32例、2014年は1月だけで5 例となっています。厚生労働省は、CRS の発生を早期になくすとともに、2020 年度までに風疹の排除(はいじょ)達成を目標に、予防に取り組んでいます。

B 型肝炎ワクチン(11~12歳・4回目の接種)

B型肝炎(かんえん)ワクチンはB型肝炎ウイルスの成分を使った不活化ワクチンです。一般には任意接種(せっしゅ)として自費になりますが、B型肝炎ウイルスを持った母親から生まれた赤ちゃんには保険診療で予防ができます。乳児期に接種した場合、予防効果は一生持続し、慢性化や発がんを予防すると考えられています。ただし、抗体が低下して一過性の感染をきたすことはあるので、思春期早期(11~12歳) の最後のワクチン(男児ならDTの2期、女児ならHPVワクチン) と同時接種で実施することが推奨されます。WHO(世界保健機関)は1992年、B型肝炎の感染源の撲滅と肝硬変や肝臓がんなどをなくすために、出生後すぐにB型肝炎ワクチンを定期接種として接種するように推奨しています。

HPV ワクチン(中1~高1・定期接種)

ヒトパピローマウイルス(HPV)は主に性行為で感染(かんせん)します。子宮頸(しきゅうけい)がん予防のためのHPVワクチンとして、サーバリックスとガーダシルがわが国で承認されています。産婦人科診療ガイドライン・婦人科外来編では、10~14歳の少女が最優先に推奨(すいしょう)されます(推奨レベルA)。2010年11月からは公費助成が始まり、多くの地域では中1 から高1 の女性を対象に開始され、2013年度からは定期接種に移行しました。ワクチン接種を契機として重篤(じゅうとく)な副反応が発生したとの理由で、厚生労働から、積極的な勧奨(かんしょう)を一時中止する旨(むね)の勧告(かんこく)が出されて以来、HPVワクチンの接種は激減しています。ワクチン接種の安全性が科学的にかつ速(すみ)やかに確認されることが期待されます。HPVワクチンについては、子宮頸がん予防ワクチン、受けたほうがいいの?にくわしい情報があります。

自分が子どもの頃、どんな予防接種を受けてきたかは、母子健康手帳に記録されています。おうちの人に、自分の母子手帳を見せてもらって、巻末(かんまつ)の「ワクチン接種」記録欄に書きこんでおきましょう。

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