妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群

Doctor:
平松祐司

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 産科・婦人科学教室

妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群は、妊娠中におこる代表的な合併症(がっぺいしょう)です。どちらもおなかの赤ちゃんに悪い影響があるので、管理・治療が必要です。

「妊娠糖尿病」とは?

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常(とうたいしゃいじょう)です。やせていても、食生活に気をつけていても、発症します。これを発見するには、妊娠初期に血糖をスクリーニングし、その値が高ければ、糖負荷(とうふか)試験をして診断します。妊娠初期の検査は見逃されていた糖代謝異常をみつけるのに大切です。スクリーニングは妊娠中期(24~28週)にもう一度行います。妊娠が進むにつれて、血糖を下げる働きをもったインスリンというホルモンの効きが悪くなるからです。妊娠糖尿病がみつかったら食事療法で、それで不十分ならインスリン注射を用いて血糖を厳重に管理します。血糖のコントロールが不十分なら、巨大児や、赤ちゃんの低血糖、黄疸(おうだん)など多くの合併症がおこります。お産の時期、方法についても注意が必要です。妊娠糖尿病のお母さんとその赤ちゃんは、将来何倍も糖尿病になる確率が高いので、出産後も厳重にフォローアップしていくことが大切です。くわしい情報は日本糖尿病・妊娠学会の妊娠糖尿病に関するQ&A でみることができます。

日本糖尿病・妊娠学会 : http://www.dm-net.co.jp/jsdp/

「妊娠高血圧症候群」って何が悪いの?

妊娠高血圧症候群は、妊娠中に血圧が上昇し蛋白尿(たんぱくにょう)がでる病気で、妊娠20 週以降におこります。胎盤(たいばん)にも影響があり、赤ちゃんの発育が悪くなります。初産婦、肥満、高齢、前の妊娠中に妊娠高血圧症候群になった人、高血圧・腎臓病(じんぞうびょう)・糖尿病などのある人は、要注意です。妊娠中の急激な体重増加もよくありません。重症化すると痙攣(けいれん)(子癇(しかん))をおこしたり、胎盤が剥(は)がれたり(常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり))することもおこります。したがって、リスクのある人は妊娠初期から厳重な体重管理をする必要があります。もし発症したら、食事療法と薬物療法を行い、お母さんの状態・赤ちゃんの状態を評価しながら、分娩する時期を決める必要があります。妊娠高血圧症候群は分娩後12 週までに症状が消えますが、症状が残っている場合はほかの病気がないか調べる必要があります。くわしい情報は日本妊娠高血圧学会のホームページのQ&Aでみることができます。

妊娠高血圧症候群Q&A :  http://jsshp.umin.jp/i_9.html