ダイエット、拒食・過食

Doctor:
松本俊彦

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所自殺予防総合対策センター

あなたは、体重のちょっとした増減に一喜一憂(いっきいちゆう)し、いつも自分の体重や食べたもののカロリーにとらわれてしまっていませんか? 太るのが怖くて食事がとれなくなったり、あるいは食べ過ぎてしまったことを後悔して、喉(のど)に指を突っ込んで吐いてしまったり、下剤(げざい)を多く服用したりしていませんか。

ハードなダイエットはリバウンドにつながる

こうした不健康な食生活を続けることのデメリットは、「太りやすい体質」になってしまうということです。ダイエット経験者ならば思い当たるはずです。リバウンドして一日食べ過ぎただけなのに、驚くほど体重が増えてしまったという経験はないですか。実は、拒(きょしょく)食を続けていると、からだは完全に「飢餓(きが)モード」になってしまい、栄養吸収率が異常に高くなってしまうのです。それで、ますます食べるのが怖くなっていっそう拒食にいそしみますが、リバウンドの過食はどんどん悪化しています。これに加えて、過食(かしょく)後に嘔吐(おうと)をすると、事態は深刻化します。嘔吐は、血糖値を不安定にさせ、満腹中枢(ちゅうすう)の「タガ」をはずします。その結果、過食はますますエスカレートするでしょう。

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健康のための3つの提案

そんなあなたに3つの提案があります。

  • 1日3食 食べる
  • 過食したいときはする
  • 吐かない

この3カ条を実践してみませんか。「えーっ、そんなことしたら太っちゃう」と驚くでしょうが、だまされたと思ってやってみてください。3度の食事をしっかりと摂っていると、からだは「飢餓モード」から「飽食モード」に切り替わり、栄養吸収率が低下します。その結果、間食しても過食しても予想したほど体重は増加せず、不思議と過食も治まっていきます。そして長期的には、体重は減少傾向を示します。もちろん、その体重は「あなたが理想とする体重」(モデルさんみたいな非現実的な体重!)には遠くおよばないでしょうが、あなたの健康状態を維持するのにもっとも適した体重に落ち着きます。少なくとも拒食と過食にとらわれていた頃よりはずいぶんとマシな体重ではあります。なお、自宅の体重計は処分した方がいいと思います。あれがあると「とらわれ」てしまいますから。それから、どうしてもこうした「食事と体重のとらわれ」から抜け出せないという人は、学校の保健室の先生やスクールカウンセラーに相談してみましょう。