「ホルモン補充療法」を味方につけて

Doctor:
久保田俊郎

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生殖機能協関学

女性ホルモンの減少が主な原因のひとつである更年期(こうねんき)障害の症状の緩和(かんわ)のため、減ったホルモンを補填(ほてん)するホルモン補充療法(ほじゅうりょうほう)(HRT)が効果を発揮します。特にのぼせやほてりといった症状に対して有効です。ホルモン剤というと副作用が心配になりますが、定期的に受診をして検診を受けることでホルモン補充療法の恩恵(おんけい)を受けることができます。内服薬、貼り薬、塗り薬、腟坐薬(ちつざやく)といった多くの種類が開発されています。

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ホルモン補充療法の効果とは?

ホルモン補充療法によって期待される効果としては、発汗などの更年期症状の軽減のほかにも、骨量(こつりょう)を増やすため骨折の予防やコレステロール代謝(たいしゃ)を変えるため脂質代謝の改善、さらに腟の萎縮(いしゅく)症状といった泌尿生殖器(ひにょうせいしょくき)症状の軽減があります。更年期のうつ症状を軽くし、皮膚のシワを減らすといった作用もあります。

一般的に子宮全摘後(ぜんてきご)の人はエストロゲン剤のみ、子宮を有する場合にはエストロゲン剤とプロゲステロン剤が併用されます。これは子宮体がんの予防のために大切であり、また周期的な飲み方を行うと比較的性器出血の予想が容易になります。導入された当初は、動脈硬化(どうみゃくこうか)や尿失禁(にょうしっきん)の治療やアルツハイマー病に対する効果も期待されたホルモン補充療法ですが、2002 年の米国大規模臨床(りんしょう)試験ではこれらの作用は明らかにはなりませんでした。

副作用はあるの?

ホルモン補充療法の副作用として注意しなければいけないのは、女性ホルモンによって悪化する子宮体がん・乳がんや静脈血栓症(じょうみゃくけっせんしょう)が挙げられます。原因不明の性器出血や心筋梗塞(しんきんこうそく)などの冠動脈疾患(かんどうみゃくしっかん)の既往(きおう)のある人は、ホルモン補充療法を避けるべきだと考えられています。このような疾患の有無は、治療開始前に検査を受けスクリーニングされることが重要です。

更年期の治療として大切なことは、この時期の生活習慣を適正にすることを第一に考え、ホルモン補充療法は必要最少量かつ短期間の使用として、子宮体がんなどの検診を怠らないこと、などが挙げられます。適切な使用法と副作用予防に注意し、ホルモン補充療法のリスクとベネフィットをよく理解して、安全な治療を心がけることが大切です。