子宮体がんは、妊娠中に赤ちゃんが育つ子宮体部にできるがんで、日本では年々増加傾向にあります。閉経(へいけい)後の50歳代にもっとも多く、60歳代や40歳代が続きます。子宮体がんになりやすいのは、妊娠や出産の経験がない場合、あるいは妊娠や出産の回数が少ない場合、肥満の人、高血圧や糖尿病にかかっている人、食生活が欧米型で脂肪分を多く摂取されている場合、などが挙げられています。
ほかのがんと同様に、初期には症状がありません。ある程度進みますと不正出血を訴えることが多く、患者さんの多くがそれで受診します。閉経したはずなのに最近また出血がある、あるいは色のついたおりものがでる、閉経前でも月経が長引いたり月経とは違う出血やおりものがあるという場合には、積極的に産婦人科受診がすすめられます。一般に「婦人科がん検診」というと、子宮頸(しきゅうけい)がん(子宮の出入口にできるがん)の検診を指しますが、不正出血や異常なおりものがある場合には、いっしょに子宮体がんの検査もできます。診断は子宮の中に器械を入れて、子宮内膜(しきゅうないまく)細胞や組織を採取し顕微鏡(けんびきょう)での検査を行います。がんと診断されますと、今度はどの程度がんが広がっているかを、MRIやCTで検査します。子宮体がんの進み具合(進行期)は4段階に分けられますが、診断時点で70%の患者さんは「早期(がんが子宮の中に留まる1期か2期)」です。
子宮体がんの治療は、手術、放射線、抗がん剤、ホルモン剤の4つに大きく分けられますが、90%以上の患者さんでまずは手術を行います。それはがんが子宮の中だけに留まっている場合が多いので、手術で完全に取り除ける場合が多いこと、もし子宮の外にがんが広がっているとしてもそれは手術してみないとわからないこと、などによります。がんが広がっている場合、顕微鏡で見たがんの種類(組織型)が悪いタイプだった場合などでは、手術の後に放射線や抗がん剤による治療を追加することがあります。一方で、高齢やほかの疾患(しっかん)を合併しているために手術ができないような場合には、最初から放射線をかける場合があります。ホルモン剤は、主に再発してほかの治療法がなんらかの理由ですすめられない場合に使われることがほとんどです。若い人でこれから妊娠出産を考えている場合には、ごく初期と考えられる場合に限り、ホルモン療法で治療することもありますが、まだ試験段階の治療と考えたほうが無難です。早期で見つかった場合には予後は良好で、80%以上の人が5 年以上生存されます。普段の月経とは違う出血やおりものがある場合には、迷わず産婦人科を受診しましょう。