不妊とは?

Doctor:
久具宏司

東京都立墨東病院産婦人科

不妊って、どんな状態をいうの?

生殖(せいしょく)可能な年齢にある男女が避妊することなく性交渉を行っていても妊娠しない場合、その状態がある年数続けば、それを不妊といいます。妊娠しない期間が何年続けば不妊というのかについては、3年とする場合もあれば、1年とすることもあり、定まっていません。2年間妊娠しない場合に不妊と考えるのが、現在では一般的です。しかし、2年経っていなくても、その男女の年齢を考慮して、不妊の原因がないか検査したり、治療をすることもあり、どの段階で不妊診療を開始するかは、ケースバイケースです。不妊に対して診療を開始した場合は、不妊症(ふにんしょう)と呼ばれます。また、なんらかの理由で性交渉そのものが行なえないような状態も不妊症とみなして診療の対象となります。

不妊の原因はどんなもの?

不妊の状態には、一度も妊娠したことのない「原発性不妊」と、少なくとも一度妊娠したことのある「続発性不妊」があります。また、不妊の原因が男女のどちらにあるかにより、「女性不妊」と「男性不妊」に分けられます。多くの場合、診療の開始が女性であるため、女性側の原因が強調されがちですが、男性側に原因のある例も同程度にみられます。不妊の原因が男女の両者にある場合もあります。診療は必ず夫婦ともに受けましょう。ほかに、原因のはっきりしない原因不明不妊と呼ばれる状態も少なくありません。妊娠成立は、女性の卵巣から排卵された卵子と男性側から射出された精子との結合(受精)、それに続く受精卵の子宮内膜への着床の過程です。過度の疲労や精神的ストレスは、女性に対しては排卵障害や着床障害を、男性に対しては精子の数や運動率の低下を引きおこします。また、疲労やストレスは健全な性交渉も妨げることとなります。疲労やストレスは日頃から避けることが大切です。

男女ともに加齢の影響を受ける

女性の年齢とともに卵子の数が減少し、また、卵子の質が低下することが知られています(加齢と妊娠のリスク参照)。年齢の上昇とともに子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)や子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)などが発生し、子宮周囲の環境も妊娠しにくい状態になることがあります。男性においても、年齢の影響は精子の数や運動性の低下として表れます。現在の日本では、不妊夫婦の比率は10~15%とされ、じょじょに増加してきています。この原因は、主として男女ともに結婚年齢が上昇していることによるとされています。妊娠に向けての取り組みは、早いうちから始めた方がいいといえるでしょう。